穴社員




夫からは「AKにはボルダリングは絶対無理」とずっと言われていたけれども、一昨年比叡のヤケダケエリアで初のボルダリングをしたとき、「すごく楽しい!」とすぐに感じた。

ロープ、ビレイヤー、ヌンチャクのセットに回収、 細々とした道具から解放され、体一つで岩を登る楽しさはリードクライミングとは本当に違った。
道具はぐっと少なくなるけれども、ボルダリングで覚えることは登ること以外にもたくさんあって、私はまだまだこなせなし、気も回ってないけれども、 2度目のヤケダケエリアで小結岩の「産休」という3級を登った時、初めてボルダリングで完登の達成感を味わって、ボルダリングの楽しさの片りんに触れた気がした。岩を登る楽しさが、ロープ付きクライミングではない恐怖を押しのけて越えていく感じがたまらなかった。

それから、しばらくボルダリングはご無沙汰だったけれども、去年のGWに小川山と瑞牆でボルダリングをした。その時はロープメインで遠征したので、マットは川上村に一時在住のNくんの年季の入ったマット1枚。そのマット1枚を4人でシェアして、簡単な課題をいくつか登ることができた。なかでもクジラ岩の「穴社員」3級を登ったことはヤケダケの「産休」をはるかに超える嬉しさだった。
今回のパーティーで私だけ何も成果の無いまま(1本だけ5.11aをFLしたけど)でGWは終盤に入ってて、何としてもお土産となる1本を登りたくて、わがまま言ってYちゃんにクジラ岩についてきてもらった。雨上がりの夕刻の小川山、 ひとはまばら。くたくたのマット1枚をずらしながらムーブを解決していき、「あと1回」と何度も言ってトライしては振られにたえきれずに岩から突き放された。(しかも、最初はラインを間違えていて、ほか隣のラインのカンテを使ってしまってた。)
日の入りも迫って、シャープなポケットで指が切れ、時間的に体力的にもう引き際だなと思った頃に、夫とEくんが妹岩のクラックから戻ってきて、わざわざクジラ岩に寄ってくれて、サポートに入ってくれた。これで本当に最後、絶対岩からはがされない、と心に誓って、最終トライで完登した。

この時他にトライしている人は居なかったけれども、ムーブ解決前は夫やEくんが登ったときの写真を見返したり、Yちゃんとムーブを探ったりして、完登までの動きが整ったし、何より3人の仲間のスポットがなけれは、私は登れていなかった。リードはビレイヤーが必要だけれども、ボルダリングも一人で登るわけではないんだ、付き合ってくれた仲間のおかげで登れたんだと改めて思った。思うにリードのほうがもっと孤独かもしれない。

とにもかくにも、穴社員という課題のおかげでボルダリングがとても好きになった。岩の上に立つって気持ちが良いもんです。(もちろんアウトドア限定、インドアは嫌いです…)





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