白亜スラブ

3月のこと



比叡の白亜スラブは私がクライミングを始めたころくらいからの憧れのマルチピッチだった。
憧れになる要素はたくさんあって、まずは比叡の三ツ星ラインの5.11-グレードのマルチというスペックということ。さらに、あの山野井夫婦がわざわざ登りに来たとか(おそらくその時のサインが那須商店にある。。。)、その直後にLeadのオーナーのふたりが登ったとか。MさんがオールNPで登ったとか、そのときフォローしたノミーもYちゃんと行ってANPに成功したとか。N村さんNさん達がリボルトしたとか。
とにかく周りのクライマーのこのルートにかける熱量の凄さは別格だった。

ちなみに夫は7-8年前(?)、まだ私たちが付き合ってもいなかったころにオールフリーを目指していって、白亜に鼻をへし折られている。
人づてにその話を聞き、フォローでも連れて行ってもらえるレベルではなかった私にとって、白亜スラブとはあまりに別世界の話のことのように思えた。

そんな白亜に、コロナ騒動前の3月にDさんと3人で挑戦した。
結果、夫がオールリード、オールフリーで白亜を抜けられて、その達成がドラマティックで感動的だった。 無線機から聞こえた夫の興奮した報告に、思わず雄叫び上げて返した。
セカンドのDさんは13クライマーだけあってフリーを念頭に置いた慎重な登りで楽しんでいた。
私はヌンチャク掴みながらとにかく時間短縮のトップアウトに徹したけれども、それでも十分に楽しめた。
 ちょうど背面に矢筈岳がそびえ、高度を上げるたびに矢筈の山頂が近づき、南を向けばニードルの頭が見え、最ッ高の景色。 
3ピッチ目の5.10のセクションと4ピッチ目の5.11-のセクションは私はレイバックを多用。4ピッチ目のハングには圧倒されたけど実際はホールドたくさんあり、大丈夫だった。この先のフィンガークラックがジワジワパンプしてくる核心。レイバックだったからか流石にパンプして一度セルフを取った。
最後の5ピッチ目は5.8なのに悪かったぞw!(※悪いと思ってたら、正規ではなく新しくできた直登ルートで登攀してました。) 

オールナチュプロでも登れることから色々言われがちな白亜だけど、ボルトがあるおかげで私みたいなクソでも3峰の山頂へいけるのです。そして、この素晴らしいラインに自分の足で立てるのです。美しいフィンガークラックを眺め感動に浸れるのです。
私はこのピカピカのボルトにとても感謝してます。 
白亜の終了点の石舞台に座り、3人で眺めたでーーっかい矢筈岳を忘れない。連れて行ってくれてありがとう。
この白亜を大切にしてくださってるクライマーの方々にもありがとうございました。

これが今の私達の等身大のクライミング。強くなりたい。また絶対登りたい。 
夫は下山路をすっかり忘れており、さらにかなり疲れ切っていたので、私が先頭を歩いて降りた。 
枯れ葉の積もるうっすらとある踏み跡を辿り、たまにあるテープを頼り、竹林に出てからは適当に車道まで下山。急坂であっという間だった。

下山してからは隣の橋井ルートを登っていたEちゃんたち(マスターズルーフ2撃マン&もぐらたたきOSマン&アルプスガイド女史の最強トリオ)と合流。あちらも大健闘だったよう。 

実は前日に矢筈のワイドクラックのもぐらたたきルートで悲惨な登りをしてしまい、皆に迷惑をかけてしまったことで、クライミングする資格なし、、と、私は一晩中かなり落ち込んでいた。そんな心境で憧れの募る白亜に行って、結果ものすごくたのしめることができた。登る喜びをかみしめながら思うことは、やっぱりどうしてもクライミングが好きらしい。 

余談:NさんSさんたちが、白亜の下部のピッチの整備をされたようで、下からつなげて登れるようになったとのこと。(10ピッチ?)






矢筈岳

ニードル

 





コメント