天狗岳






一ヶ月も想い出を胸に留めていて、こうやって振り返って頭に浮かび上がることといったら、
足を止めて食べたブラウニーのことや、
こんもりと雪を被る西天狗岳の山容、
すれ違ったおじさんのウエアの胸の刺繍がナッツ(クライミングギアの)だったのでちょっと驚いて、笑ってしまったこととか、
それらは断片的なものばかりで写真を見返さないと詳細に想い出せないのだけれども、

山頂で感じた風のにおいとか、日差しの強さとか、空気が緊張していた様子とか、きんとした無音の寒さとか、そんな体感のことだけは、私は、昨日のことのようにはっきりと憶えている
自在に感覚を取り出しては、その度に胸がきゅっと締めつけられる
私のからだの一部となって生き続ける大切な記憶

目では見えない何かに深い関心を憶える
山も、音楽も

raymond carverのwhy don't you danceの短編が私はとってもとっても大好きなんだけど、つまりそういうこと
筆舌に尽くしがたいことが世の中にはあって、実質的なものよりきっと、そういうことたちが人生に於いて核となることだと、
きみもそう想わないかい

ことしも心震えるようなハイキングができますように
とりあえず、大気が正常に戻って、気管支炎の悪化に懸念せず、のびのびとおそとで運動したいものです(切実)